夏海

Open App

#巡り会えたら

【創作BL】旭と日野3

間近から日野の視線がまっすぐ刺さる。あまりの視線の圧に、熱さまで感じるくらいだ。それでいて、旭の左手を握りしめたままの日野の手は、びっくりするくらい冷えきっていた。
「俺には、そんくらい聞く権利があるんやないか」
日野に告白されて、ああやっぱり彼は自分のことが好きだったのか、と。旭には腑に落ちるところがあった。
ふと視線があうと返してくれる笑顔や、さりげない気遣いや、嬉しそうに旭を呼ぶ声や……よほどの鈍感でない限り、気づかない方が無理があるくらいに好意を寄せられていた。そう旭は感じていたからこそ、それを失うことが怖くて日野に友だちでいようと告げた。
残酷にも、あの時の旭には、それができてしまった。
「ごめん……俺が悪かった」
告白の以後、日野は旭の友人として、実に誠実に接してくれていたというのに。
旭は、マネージャーの築山がわざわざ昼休みに日野を呼び出し、告白したことを知り、居ても立っても居られなくなった。
午後の授業は上の空のまま終わり、部活中も日野と築山の様子が気になって落ち着かない。
「やから、旭に謝って欲しいんやないって」
「そんなん、俺の気が済まん!」
ここで、今。ちゃんと謝って、けじめをつけてから、日野に気持ちを伝えたい。こんな機会は二度と巡ってこないかもしれない。
俺はあの時のことを後悔している、と旭が口にしかけたとき、急にまばゆいライトが二人を照らし、心臓に響くクラクションが鳴った。

(続く)

10/3/2023, 1:46:01 PM