題 虹のはじまりを探して
「ねえ、虹ってどこへ続いてるのかな」
私は恋人と河原を歩いていた。
斜め上の空を見上げると、雨上がりの薄水色の空に虹が輝いている。
そんな虹を眺めていたら、ふとこぼれでた言葉だった。
「虹ねぇ、どうかな。わからないな」
彼氏は興味無さそうな返答をする。
「何その関心なさそうな態度」
私はつまらなくなってそう吐き出す。
彼氏はそんな私にため息をついた。
「何?なんていってほしかったの?」
作り笑いみたいな笑顔を貼り付ける彼氏を横目で見る。
この表情、キライだ。
「虹の国に続いてるのかな、とか、どこだろうね、世界の果てだったら面白いねとか」
「そんなファンタジーな感想、俺に求めるなよ」
彼は、眉をひそめて軽い非難口調で私に言った。
「じゃあ、逆に聞くけど、波花はどこに続いてると思ってるの?」
「え?そーだなぁ。あんなにステキな色なんだから、夢の国で、ユニコーンが沢山飛んでいるとか、むしろバクとかがいたりしてっ!それか、空の海に続いてて、虹色の海の中にオーロラ色のクラゲが漂ってるとかかもー」
「⋯⋯まぁ、そこまで想像力あるなら、ファンタジーな共感を俺に求めても仕方ないか」
彼氏は再び私を見てため息をつく。
「ため息つかないでよ、私の事子供だと思ってるんでしょ?!」
彼氏の反応にムカッとして、胸を軽く叩く。
彼氏は冷静に私の両手を捕まえて言う。
「はいはい。俺は波花みたいな想像力はないんだからさ、求められても困るわけ。別に波花が子供とか思ってる訳じゃないよ。すぐ想像力働かせられるのは凄いと思ってるし」
手をつかまれて、目の前で言われて私はドキッとする。
真剣な彼氏の顔。
「うっ、ほんと?でも、共感して欲しいんだもん」
「それは悪かったよ。共感かぁ。頑張る。⋯でもさ、俺、ファンタジーの国の住人じゃないんだからそこは大目に見てくれよ?」
そう言いながら、彼氏は私の頭をポンポンと撫でる。
⋯⋯これのどこが子供扱いしてない、なのよ?
と思う。
「じゃあさ、まだ時間も早いし、波花が好きなぬいぐるみ沢山のカフェに行こうか?ファンタジーワールドに浸れるようにさっ」
彼氏の言葉に、私の機嫌は瞬間的に回復する。
「ほんとっ?!嬉しいっ、大好きっ!行く行くっ!!」
「じゃあいくか?」
私は彼氏の差し伸べた手を握りしめる。
空には淡く消えていきそうな色の虹。
⋯はじまりは一体どこだったんだろう。
そんなステキな思いを馳せさせてくれた虹。
彼氏と共感できなくても、私はまた虹が出た時考えるだろう。
正解は分からなくても考える時間は楽しいから。
彼氏にはできないって言ってた。
ファンタジーな思考を巡らせられることは、実は私の特権だったのかもしれない。
7/28/2025, 11:44:44 AM