勝ち負けなんて
か 「勝っても負けてもどっちだって
いいんだよ。結花はがんばった
じゃないか」
ち 父は泣いている私の頭をなで
ながら穏やかにそう言った。
ま 負けん気が強い子どもだった。
彩にかけっこで負けたとか、
劇の主役に選ばれなかったとか
でよく泣いた。
け けなしたりしない人なのである。
「参加することが大事なんだよ。
木の役、いいじゃないか。
結花は結花らしく、のびのび
成長してくれたらそれで
いいんだよ」
なん なんて父は優しくて、正しいこと
を言うんだろ。泣きやんで
から、思うことがあった。でも
それってさ、牙を抜かれた猛獣
みたい。噛みつきたい気持ちは
どうしたらいいのよ?
て 「てかさ、勝たなきゃ意味ねー
から」彩を従えて、私は雪菜の席
に向かう。限定品のコスメを
見せつけるために。数年が経ち、
私はいちいちマウントを
とらないといられない女子に
成長していた。
5/31/2025, 2:34:11 PM