『相合傘』
「雨だな、、、」
「梅雨ですからね」
最近出来た新しいパスタ屋がおいしいと女子社員達が話していた。
「夏目くんもランチ行ってきたら?」
ー雪村さんと。
僕と雪村さんのことを知っている女子社員の高崎さんが僕にしか聞こえないボリュームでそう言って、通り過ぎて行った。
「あ、傘、、、」
会社の正面玄関の外に出た瞬間、雪村さんはハッとして、しまった、、、という顔をした。
「抜かりはありませんよ?
僕、折りたたみ傘持ってますから」
スーツのジャケットのポケットから小さめであるが傘を出して、雪村さんと自分の間で広げた。
「小さいですけど、無いよりはマシです」
「助かる」
雪村さんがそう言って、僕を見た。
「役得です」
「、、、お前、その顔やめろ。腹黒だ」
「えー誰も見てませんって。
それよりもう少しこっち寄ってください。
濡れますよ」
僕はそう言って、空いた手で少し照れている雪村さんの細い腰を抱き寄せた。
6/20/2024, 12:43:48 AM