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「こんなものしかなくて、ごめんねえ。こんなの古臭くてやだよねえ」
祖母はそう言って、先ほど申し訳なさそうに出したドロップ缶を下げようとしたので、良心がちくりと痛んだ俺は「食べる」と無理矢理受け取った。
缶を傾けると、ころんころんとカラフルなドロップが転がり、手のひらを彩る。
無心に舐め続けていたら、ふと視線を感じた。
顔を上げると、4,5歳くらいの幼い女の子が大きな目をらんらんと光らせ、頬を林檎のように赤く染めてじっと見ていた。
どんな対応が正解なのか分からず固まっていると、女の子が口を開いた。
「それ」
「…え?」
「いっこ、ちょーだい。いっこだけ」
「…う、ん」
ぎこちない仕草でドロップを差し出すと、女の子は「ありあと」と舌足らずに感謝を述べ、ふっと消えてしまった。
そこへ、祖母がお茶を持ってきた。
「ばあちゃん、この辺に小っちゃい女の子がいる家族とかいる?」
「いや、この辺は全部じじばば農家の家だよ?」
きょとんとした祖母に、慌てて先ほどの出来事を話すと、祖母は目元の笑い皺を深く刻んで声を転がした。
「昔みたいだねえ。甘いものは虫歯になるからだめって言われてたから、よく『いっこ、いっこだけ』って母に強請ってたよ。なつかしいねえ…」
その頬の色は、あの女の子と同じ色をしていた。

4/4/2026, 10:55:25 AM