中学生

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「なんで?」
明菜は足柄駅構内でひとり呟いた。明菜の足元にはなぜかカニが落ちていた。なぜ、どうしてと思う。
 明菜はただフリースクールに行こうと駅を利用していただけなんだ。渡り廊下を歩いていただけなんだ。すると視界の端に赤いものがうつって下を見てみるとスーパーで買っただろうパック詰めされたカニが落ちていた。
 口元を緩めてスマホを取り出しパシャリと写真をとる。SNSを開き、撮った写真を添付して「変わった落とし物だな〜笑笑 ※このカニは美味しくいただきました」と投稿完了した。
 明菜はひとりクスクスと笑いながら階段をバーっと駆け下りる。なんだか、可笑しなものを見たと思った。
 明菜は毎日この時間帯に足柄駅の渡り廊下を通っているが、あんなもの見たことがない。スーパーの袋からこぼれ落ちるにしても、気づかない物なのか。
明菜はいつものようにホームのベンチに腰掛けてイヤホンをはめ、ロックを聴きながら友達のハルカにも同じ写真を送った。今からいくフリースクールにも彼女はもう既に出席しているだろう。するとすぐに返信がきた。
「なにこれw」
「駅で迷子になったカニ🦀」
「なんでwww」
「わかんない笑笑」
「どゆことよww」
私はハルカの反応にニヤニヤしながら満足気にスマホの電源を一度落としてロックンロールのメロディに集中した。
電車は遅延して5分後に来るらしい。
そうした次の瞬間、ロックとは全く別物のバイブがなった。ビクッとしてスマホを落としいそうになり、慌て
周りを見渡した。みるみる顔が熱くなるのを感じる。
しかし、平日の昼前に小規模な駅を利用しているのは明菜だけなようだ。
明菜は少し緊張しながらもう一度スマホの画面を見つめる。案の定、誰から電話がきているらしい。
しかし、知らない番号からだ。明菜は少し迷ったが、フリースクールからかもしれないと思い通話ボタンを押して耳に当てた。
誰の声も聞こえない。しかし、電話の向こうから聞こえてくる雑音が相手の存在を知らしめた。相手口に誰かがいることは明白だ。呼吸音まで聴こえる。
誰かが明菜に電話をかけてきて、なぜか無言を貫いてる?
「もしもし」
明菜は小さい声でそう声をかけた。
ブチっ。明菜がそう言ってからしばらく間を空けてから電話は切られた。



「おはよ」
「おお、おっはー、てかさっきの写真まじなんなんアレ笑」
「足柄駅の渡り廊下に落ちとったんよw」
私はハルカの隣の席に座って荷物を置いた。手に持ったスマホからイヤホンを外す。
 ここは駅から徒歩30秒のフリースクールだ。というか、半分駅構内にあるといっても過言ではない。
 改札を超えたすぐそこに、看板があり、看板を越えて地下へと続く階段を降りればすぐに教室がみえる。
 所狭しといったように文房具や掃除道具などのレジャー用品が並んでいる。少し寒すぎるほどに効いた冷房と、誰かの雑談の声、ペンを走らすいつもの音が明菜をロックの世界から現実に引き戻した。
 なんだか今の、なにかの映画のシーンでありそうだな。主人公がイヤホンを耳につけるとその曲とopロールが流れ始め、外すと誰かと挨拶するんだ。Hi!ってね。
しかし、私が何かの主人公になるということは一生できないんだろうと明菜は思う。
「明菜、これ誰?」
ハルカが明菜に話しかける。明菜はまた関係ないことを考えていたと気づき内省した。
「なにが?」
「これだよ、貴方の投稿。」
 私はハルカが見せてきたスマホの画面には先ほどSNSに投稿したカニの画像があった。ハルカがスクロールするといいね欄が表示される。そこには知らない誰かが表示されていた。
「誰これ、私も知らない。カニ面白く思った人がいいねしてくれたんじゃね?笑」
 私は自分のスマホでそのSNSにログインした。
「うわ、やば」
 通知のマークに+99とかいていた。普段ならこんなに反応があることはまずない。もしかしてカニがバズった?だとしたら少しマズイかもしれない。
 あのカニはスーパーで買ったようなパック詰にされたものだった。カニが傷んだ様子はなかったし、近くのスーパーで買ったんだろう。
値札のシールに、スーパーの名前でも書かれていたら、全世界に住んでいる場所を公開したようなものだ。

 そう思考を巡らせながら通知マークを押した。すると、どうもカニの投稿に沢山いいねされていた訳じゃない。
「どうしたの?」
 明菜はハルカにスマホの画面をみせた。特定の誰かから私の日を追うごとの投稿にいいねされている。
 明菜はスクロールしてその通知をみる。
「何コイツ、めっちゃキモいね。」
「うん。」
 いくらスクロールしてもいいねされましたという通知は終わらない。2年前の投稿にまでいいねされている。そんなに遡ってまでいいねを押して....この人は何がしたいんだ。
「ID非公開って、名前か。できないもんね、非公開には。」
「そうだね。初期アイコンに....プロフィールには何もかいてない。フォロワーはゼロ、フォロー中だけ1。」
「アンタじゃない?」
明菜はフォロー中の欄を見ようタップとした。しかし、相手側の設定で見れなくなっていて表示できないと、テロップが出る。
「気持ち悪い」
さきほどアカウントを新設したようなSNS初心者の人かとも思ったが、こんな設定をしているということは、そうでもないだろう。
私の頭に先ほどの無言電話がチラつく。
「さっきさ、駅のホームでベンチ座ってたら変な電話かかってきたんだよね。」
「え、同一人物かもしれないってこと?めっちゃ怖いじゃん。どんな感じの電話?」
「話しかけても応答なしで、人間の息遣いが聞こえるの。」
「.....ストーカーじゃない?」
「え?」
「もし同一人物なら、全投稿にいいねして、電話して、どちらにしろヤバいヤツだよソイツ。とりあえずブロック」
「そうだね」
 明菜は少し震える手でそのアカウントをタップして相手をブロックした。
「また何かあったらすぐ言うこと」
「分かった....ありがと、ハルカ」
「いいんだよ、マジで心配だから」
ハルカのセリフにじんわりと胸が暖かくなるのを感じた。



続きは後ほど!🦀
.....一人でも読んでくれたら死ぬほど嬉しい

6/25/2025, 2:38:51 PM