たろ

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※閲覧注意※
軽率なクロスオーバーとIF歴史。
モブキャラが普通に居るよ。
何でも許せる人向け。


《遠くの空へ》

良くあると言われる兄弟喧嘩という名の手合わせが、眼の前で繰り広げられている。
雅な広い屋敷の中にある広い庭に不釣合な、激しい剣戟の音が響き渡っているのだ。
「よさないか、お前たち。御子が怯えている。」
暖かくて大きな掌が、恐怖に震える背中を擦ってくれる。
恐る恐る振り返って見上げると、優しい面立ちの男性がふわりと笑った。
「いつも弟達が、すまない。毎度のことながら、気にしないで貰えるとありがたいが。…ふむ、しかし終わりそうにないな。」
どうしたものか、と思案顔をした青藍の瞳がすっと細められた。
「御子殿、ご一緒戴こう。あぁ、ご覧戴きたいものがあるのだ。」
青色の着物に包まれた腕に、体ごと抱き上げられてしまう。
『はわゎ!あ、歩きます!ごめんなさい、重たいから、降ろしてください…。』
だいぶ高い位置に抱き上げられてしまい、困惑するやら怖いやらで、結局抱き上げてくれた眼の前の人に縋る。
「いい加減にしなさい、ふたり共。御子殿は、私が預かるからね。」
剣戟の音を背に、その場を後にする穏やかなその人。
「落ち着いたら、迎えに来させよう。」
始まると長いのだと言って笑う青色を纏うその人に、身を委ねた。
(腰が抜けてるの、バレてるんだろうなぁ…。)
妻子も余裕もある大人な男性が、血の繋がりもなく擬似的に伯父となるのは、不思議な事に思えた。
「あぁ、そうだ。あまねの君にも、話をしておこう。御子殿を怖がらせる愚弟には、灸が必要だろう。」
剣戟の音の向こうから、女性の声がした。
「聴こえていたか。あまねの君に、挨拶をしても良いかな。」
振り返ると、庭の中ほどに銀色の髪がキラキラと光を反射していた。
剣戟の反射は影を潜めて、音も静かになっていた。

抜ける様な青い空が、広がっていた。

4/12/2024, 2:37:49 PM