池上さゆり

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 この恋が終わった理由を探していた。まだ、悲しみの余韻が残っている中、私は家族に手伝ってもらいながら荷物を車に積んでいた。このボロいアパートに何年住んだのだろう。ここで笑い合った日常があった。ここで命を助けてもらった。ここで結婚を誓い合った。
 それでも、気づけば私だけが感じる息苦しさだけが部屋に充満していった。徐々に酸素は無くなっていって、耐えられなくなった。きっと私が愛していた人はえら呼吸でもしていたのかもしれない。少ない酸素であの家の中を生きていたのかもしれない。
 それでも、もう終わったのだ。二人の間には変わらないものがあると思っていた。形のないものや、目に見えないものだけで心の底から繋がり合えてると思っていた。でも。それもやっぱり私だけだった。
 だから、別れ話をしたときもあっさりと終わったのだ。もし、彼が泣いたら。別れたくないと言ったら。理由を聞いてきたら。なんてことを考えたが、どれも現実にはならなかった。いつから冷めていたのかもわからない。でも、そんなもの知らなくていいのだ。知ってしまえば、きっと二度と立ち直れない。その期間が長くても短くても耐えられない。愛していれば、お前呼ばわりなんてしないと言われたのも確信をつかれていた。
 名前で呼ばれなくなったのはいつからだっけ。考えなくてもいいことばかりが頭を埋め尽くす。
 どうか、私以外の人と幸せになってくださいなんて思えるほど心は広くなくて。私をこれだけ悲しませて苦しませた時間を返せ。二度と私以上に幸せになんかなるなと願いながら、最後の荷物を積んでトランクの扉を閉めた。

9/24/2023, 1:11:37 PM