海喑

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もう、貴方に会って何年も経っていたんだな
私はそう思いながら、強い風の吹く道を歩きながら思っていた。
待ち合わせの所に着く、何時来ても慣れないところだなぁ。
悴んだ手を自分の息で温めていると、また一層強い風が吹いてスカートが大きく靡く。
まだかなまだかなとソワソワしていると貴方が来る。
さっきまでの寒さがこの風に飛ばされてったかのように
体が温もりに包まれてった。
私は貴方に手を振って、貴方のとこにトコトコ歩いていく。
私の服とかを可愛いって言ってくれて頭を撫でてくれる。えへへ、と私が言うと更に撫でてくれた。
「海暗、行こ?」私の手を取ってこちらを振り向く。
私はうん!と返し、一緒に色んなとこに行く。

これを繰り返していると偶に昔の私を思い出す。
私は貴方にとっての『光』になりたかったことを。
私が貴方の事を好きになった時から、貴方を照らす、『光』になりたかった。
今、私がそうなっているかと言われても、何とも言えない。
寧ろ逆かもしれない。貴方が私にとっての『光』になっているのかもしれない。
そう思うと少し可笑しい。
過ぎた日の事、願っていたことをを想い、思い返すと、意外とそういっていないところの方が多い。
けど、そういってなくともとても楽しい。
貴方はそういう事すらも教えてくれ、貴方はすごいや。
ふと隣を見ると、優しい笑顔の君がいて私はつられて笑っちゃう。
過ぎた日の事を想うと、面白いことや新たな気付きがあってすごい面白い。
私は繋いでいる手をまたギュッと握った。

10/6/2023, 12:39:24 PM