『こんな夢を見た』
10月ごろに見た夢。
夢の中で、いたかどうかも分からない別人の人生を覗き見するのが楽しい。
***
舞台は、今より少し昔の時代。
夢の中の「私」は、18歳になったばかりの頃のことを思い出していた。
***
恥ずかしながらあの頃の私は、随分な遊び人だったと思う。ろくに学校も行かず自由奔放に暮らし、恋愛に関しても、女性と付き合ってはすぐに別れることを繰り返していた。
同性愛に理解のない時代であったことと、その私の身勝手な振る舞いもあってか、周囲からの風当たりは強かった。
好奇の目や罵詈雑言の大半は私に向けてのものだったが、私が受け止めきれなかったいくらかの誹謗中傷は彼女へ降りかかった。
その彼女というのもかなりの気ままな性格で、猫を彷彿とさせる女性だった。
私より一つ年上で、ぺらぺらと喋るときもあればむっつりと黙っているときもあるような、なんだか不安定な人。
いつも擦り切れた浴衣を着て、色素の薄い髪を肩のあたりでばっさりと切った彼女は、目を離したらいつの間にか消えているような儚い雰囲気を纏っていた。
ある日、周りからどんなことを言われても平然としていた彼女から突然、二人で帰ろうと言われた。
どこに帰るのと聞くと、田舎にある実家に、と答えた。
彼女の実家が山奥の農村にあるのは知っていたが、彼女の両親はもう既に亡くなっていて、そこは空き家のはずだ。
何もない崩れかけの家に行って、どうするつもりなのだろう。
結局数日経った日、私と彼女は煤けた壁の一軒家の前に立っていた。
彼女の後を追って玄関から中に上がると、埃と木の匂いがした。
「やっぱり、落ち着く」
彼女は少し笑って、記憶を辿るように木の壁を撫でた。
廊下を歩いて奥に向かうと、その先に大きな仏間があった。彼女は金縁の扉を開け、中に飾られた狐の面に手を合わせる。
なぜ狐なのかと思いつつ、私もそれにならった。
すると後ろから少女の手が伸びてきて、私の腕を掴んだ。不思議と驚きはしなかった。
「お稲荷様、私とこの子を一緒に連れてって」
彼女は私の背後を見て言った。
神様なんだ。そう思って振り向くと、狐面で顔を隠した少女が頷いた。
そうして私と彼女は、狐面の神様に連れられていった。
***
アラームの音に叩き起され、気だるい体を起こした。妙にリアリティのある夢だったと思う。
1/23/2026, 1:20:22 PM