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君の奏でる音楽…

ジャンルを問わず何でも聞く、知りたい。

プロではなく身近にいた人が聞かせてくれたのはアコースティックギターの曲と歌。

中学時代、全校の殆どが不良だった…その中でも毎日欠かさずリーゼントを決めていた1つ上の先輩。

見かけは関わりたくないほどの怖い印象で、ちょっとカッコ良かった。

たまたま、ふざけていたのか…授業をサボっていたのか…記憶が定かではないが、体育館のステージでギターを弾いているのを見かけた時、思わず見とれてしまった。

周りには同じく不良仲間がゲラゲラ笑いながら騒いでいた中で、長渕剛の♪おいらの家まで♪を弾き語りして、こっそり全部歌い終わるまで聞いてしまった…激しく、時に優しく誰を想って歌っているんだろう…聞いている私の胸も苦しくなった。

機嫌直して、来いよ…来いよ!おいらの家まで…
ここのフレーズが今でも目を閉じると、あのリーゼントとギターと笑い声蘇る。

もう一人は、いつもニコニコしていて、片時もギターを離さず休み時間になると、その子の側へ行くと、何弾く〜?何歌う〜?と聞いてくれた。

♪コロッケのうた♪を初めて聞いたのもその子が楽しそうに、笑いながら歌ってくれた。

放課後には、私の部活が始まる寸前までその子におねだりすると、いいよ〜!何がいい〜?と必ず付き合ってリクエストを聞いてくれた。

知らない歌も沢山聞かせて貰ったけれど、一番のお気に入りで、何処かでその歌が流れると一気に、あの教室の一番後ろで、数人の友達とその子を囲んで息をのんで聞き入った弾き語りの歌がある。

アコースティックギター一本で、ひとつも間違えもなくアルフィーの♪挽歌♪を、切なく哀しくあんなふうに優しく歌える事に、側にいた皆が感動していた。

聞いていた私達は、その時はまだ高校生…
歌の歌詞の深い意味もよく解らないまま、ギターのメロディーとその子の歌う声が、とにかく心地良かった。

高校時代、音楽の必須科目にギターがあり、苦手な子も沢山いたと思う…私も、そうだった。

課題曲をクリアしないと、単位が貰えないので必死だった…確か…禁じられた遊びだ。

半泣きになりながら、コードを指で押さえて指先が赤くなり必死に練習していた頃だったので、同じ仲間が、いとも簡単に、弾き語りをしているのが信じられなかった。

あの日、挽歌を聞いた翌日から多分、ギターで半泣きしていた軍団は変わったと思う。

あの子みたいに、音を素敵に奏でられたら!なんて嬉しいんだ!楽しいんだ!それから特訓して…皆無事、単位を獲得した。

ギターが楽しい、面白い、弾けることが嬉しい。

私にとって、君が奏でる音楽は一人ではないけれど、身近に私の耳に届けてくれたあの曲と歌は、
いつの時代に聞いても、一緒に口ずさむ事が出来る…特別な音楽…

あれから何年も経ったけれど、あの声は忘れられない…



*読んで下さり ありがとうございます*

8/12/2023, 11:27:13 AM