たぬぐん

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「ページをめくる」

そこには無数の本があった。
タイトルは様々な言語で書かれていて、名前はたまに同じものがあったが、内容が同じものは一冊も無い。

一冊たりとも同じ内容の本が無い中で、一つだけ共通点があった。
それは、1ページ目が必ず生で始まり、最後のページは死で終わる事だ。

数多の出会いと別れ、獲得と喪失、愛と憎悪、希望と絶望。
幾多の事象が記される中で、最初と最後のページだけは、例外なく同じ事象が記されていた。

この世界に生まれ落ち、そして死んでいく。
そこは、過去を生きたもの達の人生が記された図書館だった。

そして私は、一冊の本に巡り会う。
その本のタイトルは、私の名前と同じだった。
一ページずつ、私はページをめくる。

よく覚えている事も、まったく覚えてない事も、一切漏らさず私が生まれた瞬間からの出来事が、その本には記されていた。
そして今日のページを読み終わり、次のページをめくると、そこから先は白紙だった。
いつかこの本にも、死というラストが訪れるのだろう。

そして、こうして誰かに読まれる日が来るのだろうか。
わからない、予想もできない。
未来は常に白紙だ。

今後ここに訪れた誰かが、私の本を手に取ってくれますようにと祈り、私は図書館を後にした。

9/2/2025, 2:01:42 PM