君と紡ぐ物語
僕は家に一番近く一番安い飲み放題のスナックへ
週3〜4日通ってる
理由は家では映画を見ながら飲むのだが
ウィスキー1.8lがすぐになくなること
割りもののこと
氷のこと
面倒だからだ
店の中はカウンターに椅子が5脚
ボックスは4人掛けが4つという所だ
スタッフはママに従業員の女の子が二人
いたりいなかったりな黒服が一人
まぁいつもピン飲みで面倒みてもらってる
そうしていつも通りに飲みに行く
僕は大体カウンターの入り口から2番目に座る
混んできたらすぐ帰られるようにだ
今日は黒服がいない
噂だと日中も働いてるとか
単純に凄い奴だと思っている
いつも通りハイボールをもらう
ペース的には10分で一杯ただ酔うために飲んでいる
…カラオケが入る
今時の高音で歌うアーティストの曲だ
上手いし高音も綺麗に出せている
「すご〜い!
この歌難しいよね〜」
スタッフの気になる子が歌った客に言っていた
僕は低音しか出ないし
歌もそんなに上手くないから勝手に敗北感を感じていた
歌っていた客は僕が飲みに行く度に歌っていた
僕はスタッフの子を眺めていれば良かったのだが
「たまには歌ってくださいよ」
と
客に言われ断っても歌わされた
多分
自分との差を見せつけたかったのだろう
僕は歌わされる度に気持ちが冷めていった
数週間後
僕は別の店の常連になっていた
ママ一人でやってる店
圧をかける人もいない
気持ちよく飲んで帰るようになっていた
この店に馴染んできた頃
…ガチャ
「あー!
久しぶりじゃないですか〜!」
あのスタッフの子だった
まぁ僕はただ飲むだけだったが…
やたらにこの子に絡まれる
「何でお店に来てくれないんですか〜?」
嘘はついてもしょうがない
カラオケの件
僕の飲む理由を素直に話した
彼女への気持ちは伏せたまま
それから口数が減って出勤の時間だと帰っていった
店のママに聞いたが初めて来たらしい
新規の客を探しに来たのだろう
後日また彼女は来た
僕に店での愚痴や悩みなんかを話すようになってきた
何でここに来るんだろう?
悩みなんて聞きそうな客はついてるだろうに
何度も同じことを繰り返し
疑問だけが膨れて僕の心を抉る
この店に来るのも潮時かなぁ?
そう思ってグラスを空けると
店のママに言われた
「あの子
あんたの事が好きなんじゃないの?
あんた店に来て愚痴るわけでもなく
飲みたいって言ったら飲ませてくれて
程よい話と記念日ごとのシャンパン入れるし上客だよ
綺麗な飲み方で若い子なら惚れるわね
ふつー
だから
ちゃんと話して結果が出ないなら
店を変えなさい」
全てバレてた…
後日その子は来た
いつも通り愚痴を吐いていた
そして
好きだと言いかけてきた
「待って」
僕は気持ちを伝えた
別に結果じゃないから貪欲に僕から全てを伝えた
彼女は嫌われたと思ってたらしく
ずっと泣いていた
お互いの気持ちは同じ所にあって
同じベクトルが同じだけ向いてる事を確かめた
「仕事でしょ?
送るよ」
僕らは手を繋いだ
お互いを見失わないようにできるだけ強く
「がんばってくるからお迎え頼んでもいいですか?」
振り返ってそう言う彼女は強く見えて
とても綺麗だった
これは飲み歩く僕と
そんな彼女の紡ぐ物語だ
これからずっと続いてく物語
11/30/2025, 2:15:14 PM