ヒラガ

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寒さが身に染みて_16

君がいなければ
光は失われないはずだった。

私が車で帰宅しようとも
あのコーヒーショップの香ばしい煙は
今どき珍しい煙突から立ち上っていた。

家に帰るまでの間
全ての信号に引っかかった。
この信号は一度止まってしまったら長い。
だから家に到着してからのことについて
考え始めることにした。

今日は一日中スーツでいたから疲れた。
家に帰って一人でいるのに
スーツでいる必要はない。
まずは部屋着に着替えることとしよう。
……………。

気づくと青になっていた。
道が空いていたので
クラクションは鳴らされなかったみたいだ。
アクセルを踏み
今や定休日も忘れたコーヒーショップを
ゆっくりと通り過ぎた。

今日も私は仕事をこなし
信号を守り コーヒーショップを過ぎた。

本当に何もない日だ。
それが おかしいのだ。
君を失ってから 光が消えた。

ここまで言うと
“君のせいで 私の人生が狂った”
とでも言うかのようにしか
聞こえないだろう。

そうであったとしたなら謝りたい。

ただ 今の私は
普段の生活に後戻りしただけだ。

何もない日々を。
暗闇を彷徨い続けるだけの日々を。


太陽のない地球では
異様なくらいの寒さが身に染みることに
違いはなかったらしい。

1/11/2024, 5:13:58 PM