No.35『一方通行』
散文/掌編小説
どうしようもないことがあった時ほど、わたしは笑うようにしている。でもこれって特別なことじゃなく、誰もがみんな、そうしていることで。
「えー、良かったじゃん」
だから、好きなひとに好きな人ができるたび、わたしは笑った。もちろん心からの笑顔ではなかったけれど、その時、その瞬間にでき得る限りの笑顔を見せた。
世間では別れの季節だけれど、有り難いことに、わたしたちが別れることはない。というのもわたしが彼女の親友だからで、この関係を壊さない限り、わたしは彼女と一緒にいられるのだろう。だから、
「え。恋人と別れた?」
彼女が恋人と別れるたび、親友の仮面をかぶって彼女を励ましながら、実は胸が高鳴っていることも、彼女への想いと一緒に胸にしまった。
お題:胸が高鳴る
3/19/2023, 10:30:18 PM