霜月 朔(創作)

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君と



君と…。
──いや。
お前と、過ごした季節を、
今もまだ、忘れられず、
胸の何処かで、
微かに疼いている。

くだらない言葉で、
お前の心を傷つけたのは、
他でもない、私だった。

赦される筈がない。
そんな事は、分かり切っている。
それでも。
夜が深くなる度に、
お前の名を、呼びそうになる。

灯も差さぬ部屋で、
あの声が、あの瞳が、
幻のように、浮かんでは消える。

私にはもう、
お前を愛する資格などない。
それなのに、誰よりも強く、
お前を求めているんだ。

知っている。
お前も未だ、私の名を、
心の片隅に留めていることを。
それでも、私達は、
あの日の前には戻れない。

壊したのは私だ。
取り戻せないと知りながら、
それでも願ってしまう弱さが、
この痛みを、ただ深くする。

あの日、あの時。
怒りに任せて、
お前に叩きつけた「さよなら」は、
今も、私の喉を焼く。

君と──
交わした日々のすべては、
静かに、だが、確かに、
私の中を蝕んでゆく。

そして、今夜もまた、
「君」を「お前」と呼ぶことで、
記憶と現実の狭間に、
ただ、沈んでいく。

4/4/2025, 9:51:18 AM