みかん
テーブルの上に、
綺麗な紙箱が置かれていた。
ふと漂う、
みかんとチョコレートの甘い香り。
手を伸ばすけれど、
箱の蓋は重たくて。
その瞬間、浮かんだのは…
お前の、笑顔。
その笑顔が、酷く眩しくて。
指先が、一瞬止まったんだ。
箱の中には、
夕焼け色の輪切りが並んでた。
甘くて、ほろ苦い、
少しお洒落な、オランジェット。
半分だけチョコレートに覆われた、
オランジェットは、
何処か、お前に似てたんだ。
真面目だけど、何処か気取ってて、
少し意地悪な、お前の態度みたいで。
夕焼け色をそっと摘んで、
口に運ぶ。
オレンジは、酸っぱくて。
チョコレートは、ほろ苦くて。
だけど、凄く甘くて。
胸の奥が、きゅっと痛んだんだ。
いつもすぐ傍にいるのに、
お前は、全然気が付かないんだ。
ボクが抱えてる、
甘くて苦い、この想いに。
ふと、みかんの香りが、
鼻先を掠めた。
ボクは思わず、
宝石の様なオレンジ色から、
逃げたくなって、箱を閉じた。
きっと、
この甘さも、ほろ苦さも。
全部、全部…
お前のせいなんだ…って。
胸の痛みを誤魔化すように、
ボクは一人、呟くんだ。
12/30/2024, 9:58:47 AM