郊外の結婚式場にはチャペルがある。
天気のいい日にはそこでガーデンウェディングが開かれ、通りすがりの人が散歩がてら覗いたりもして、幸せのお裾分けをしている。
今日も鐘の音が鳴り響き、幸せいっぱいの新郎新婦が階段を降りてきて、会場の外にいた通りすがりから「綺麗ねえ」なんて声が上がる。
私は鐘の音を背に家路を急ぐ。
誰も祝福しない、神様から見放された恋。
鐘の音なんかしなくていい。
白いドレスも着なくていい。
綺麗でなんて、いなくていい。
「ただいま」
返事は無い。
鍵を開け、ドアを開ける。
箱の中には、愛しいあなた。
END
「遠い鐘の音」
12/14/2025, 12:19:29 AM