誰もがみんな寝静まる真夜中、影が動き出す。
寝床を出てふわりと宙に浮いた影は、するすると夜空へ昇る。影は星空が好きだ。凍て星が一等お気に入りだけれど、その実、星が輝けば季節など関係ない。地を潤す雨も、静かに世界を覆う雪も、悪戯な風も、轟く雷も好きだ。誰もがみんな、そうであるように。
夜空をご機嫌に散歩中、綺麗なベッドで眠る幸福な子供を見つける。誰もがみんな好きなように、影も幸福な子供が好きだ。影はするすると子供の枕元に降りる。そしてこめかみにキスをして夢を頂戴する。
ふわふわで甘い天国の味を堪能して、再び夜空へ。
しばらくして、今度は不幸な子供を見つける。ごみ同然の、住居とは言えない住居の中で、ごみと見紛えるほどに汚い可哀想な子供。誰もがみんな同情するだろう痩躯を見下ろし、影は憐れに思う。どうしてみんなが平等な夜を過ごし、平等な朝を迎えられないのか不思議に思う。
するすると子供の傍らに降りた影は身体を横たえる。ありもしない体温を分け与えるように。そうしながら、自分の身に溜めた幸福を優しく分けてあげる。きっと誰もがみんな、こうするだろうと希望を抱きながら。
2/11/2024, 2:56:28 AM