るに

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ぬるい炭酸と無口な君と
五月蝿いくらいの風鈴と
あとそれから。
私を退屈させるものは
たくさんある。
なのに楽しませてくれるものは
片手で数えられるくらいしかない。
冷蔵庫に入れ忘れた炭酸ラムネは
ぬるくてピリピリしない。
黒猫の君は
無口で中々鳴かない。
暑いから部屋で寝っ転がって。
風が少しあって
1階でチリチリと
鬱陶しいくらい鳴っていた。
今は何もなくて
どうでもよくて
自分は何をしたいか
眠たいのか
お腹が空いてるのか
ちっとも分からなくて。
あー、
空っぽで暑くて
何かをどうにかしたいなーって
なんとなく思ってきて
君を起こした。
にゃあっと
滅多に鳴かない君が鳴いたので、
少し驚いた。
いつの間にか1時間経っていて
冷蔵庫に入れたラムネは、
冷たくてピリピリした。
風は幾分かマシになっていて、
風鈴は鳴らなくなっていた。
君と外に出ると、
大きくて街を飲み込むくらいの
入道雲があって
入道雲にはとてつもない量の
水があることを思い出した。
このまま君と入道雲を目指して
夏から逃げて
飛び込んで、溺れて、
冷たくなりたいなぁって
走り出したら
君も走り出した。
"Good Midnight!"
ねぇ、私たち
今なら何でもできて
どこへでも行けるなら、
入道雲に飲み込まれちゃおうか。

8/3/2025, 6:14:32 PM