Ayumu

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 外から窓を打つかすかな音に気づいて、引手に手をかける。
 一本の街灯に、細かな雨粒たちが照らされていた。

 ――夜遅くに降る雨は、きらい。

 心を寄せてはいけないとわかっていて止められず、いろいろ失った哀れな過去の自分自身を思い出すから。
 求め続ければ、いつか神が気づいて奇跡を与えてくれる?
 馬鹿だ。現実は都合よく展開する物語じゃない。敢えてそんなふうに表現するとしたら「初めから未来は決まっていた」んだ。
 雨音と混ざってお決まりの四文字を何度も告げる声がよみがえる。涙か雨かわからない水を頬に滑らせながら向けられた揺れる双眸を思い出す。苦しみしか生まないぬくもりに最後包まれたことを
 力のままに窓を閉める。膝から崩折れた。目の奥が熱い、顎の奥が痛い、身体が震える!

 ――早く、早く過去にさせてよ。いつまで縛られないといけないの!

 ふたたびあの四文字が、頭の中でこだました。


お題:ミッドナイト

1/26/2023, 2:41:20 PM