この世にはルールがある。
秩序を保つため、効率化を図るため、
公平に事を進めるため……。
このように様々な事由で用意されるが、
あらゆる物事にはルールが必要なのだ。
そう、このデスゲームにさえ。
「ハァ……」
山と積まれた手元の資料にため息を吐く。
頭上を見上げると、コンクリートで囲われた薄暗い部屋に、唯一小さく開いた窓が採光の役割らしい働きをしている。
次の開催で何度目かになるこのデスゲーム「天使の交わり」は金持ちの道楽で成り立っている。
金持ち達は自分を「神」と称し、駒として訳アリの人間を拾ってきては「天使」と呼び、デスゲームに参加させる。
そこには漫画やドラマ等でよくあるようなドラマチックな展開はほぼない。
大抵は全てを支配したがる「神」と、必ず生き残って帰るという「天使」の思惑だけだ。
極稀に過去に参加した「天使」の仇討ちに来た参加者もいたが、そんな状況は事前に用意できるものではない。
そうなると、退屈してくるのはゲーム参加者の金持ち――スポンサーだ。
彼らを満足させねばならないが、面白いからといって言い分を全て叶えていてはゲームが破綻する。
しかし、毎回同じ内容ではつまらないからと、定期的にルールの変更を要求までしてくる。
流石にゲーム中の大きなルール変更は参加者全会一致で禁止になったが、では事前に用意するルールは誰が決めるのか。
そのためにゲームの管理委員は存在する。
ルールの中にも態と穴を作る者、
その穴を突くつもりだろうと指摘する者、
しかしガチガチに固めては面白くないだろうと、妙な提案をして享楽に耽る者……。
スポンサーが提案、意見した内容と、ゲーム進行のため差し出された権利書諸々の資料が目の前の山だった。
さしずめルールの宝庫、もしくは「神」の言葉――神託というわけだ。
これら全てに目を通し、今回または次回以降開催のゲームに適用した内容とルールを決め、「神」達のご機嫌を伺う。
嫌な持ち回りだが、命があり、金が貰えるならと諦めて山に手を出す。
「墜ちた天使は人と成り、ってね……」
そうぼやいた 元「天使」は、今日も帰れそうにない。
「天使は人に成ってさえ」
⊕ルール
4/25/2024, 4:14:57 AM