かたいなか

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「星、ほしかぁ……」
結構、星ネタも多いな。過去の投稿分をさかのぼりながら、某所在住物書きは数度小さく頷いた。
「星が溢れる」、「星空の下で」、そして「流れ星に願いを」。約2ヶ月で3回出題の星ネタである。
「今までこのアプリの出題傾向、『エモネタ』『季節・時事』『空関係』で睨んでたが、『星』も出題頻度高めで想定しても良さそうか……?」
満天の星、星降る夜、星の瞬き、星隠す雨雲。想定し得るネタをメモアプリに記しながら、しかし物書きはそのいずれにも、まともな物語が思い浮かばず……

――――――

流れ星といえば、夜が定番ではありますが、ひねくれ屁理屈でこんなおはなしはいかがでしょう。

最近最近、桜散り時の都内某所。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
その家族の中の末っ子は、お星様がとっても大好き。敷地に芽吹き咲く花が、星の形に似ていれば、それを星の木星の花と、呼んで愛でて尻尾で囲って、一緒にスヤスヤお昼寝します。
桜も見れば5枚の花びら。子狐の目には「星の木」で、散る花びらは流れ星。桜吹雪は流星雨です。

桜散り時の稲荷神社。
その日は風がよく吹いて、コンコン子狐の視界いっぱいに、「流れ星」が舞い飛びました。

「お星さま、お星さま!」
数日後には葉桜の、寂しい未来もすっかり忘れて、子狐は稲荷神社の敷地をくるくるくる。
「ながれ星が、いっぱいだ!」
跳んで、はしゃいで、駆け回って、今年の桜の最後を体いっぱい楽しみます。
「ながれ星いっぱいで、お願い事が足りないや!」
流れ星に願いを託せば、託した願いがいつか叶う。
コンコン子狐、子狐なりにちょっと賢いので、人間たちの古くからの、信じちゃいないけどささやかな、祈りの形を知っています。

「お星さま、願いを叶えてくださいな、いっぱい叶えてくださいな」
今年もおいしいお米が、いっぱい育ちますように。おいしいおいなりさんとお揚げさんが、いっぱい食べられますように。それからそれから、えぇとそれから。
小さなおててで花びらを集めて、この流れ星にはこのお願い、その流れ星にはそのお願い。
子狐は幸せで小さな欲張りを、おててが桜の流れ星でいっぱいになるまで、吹き込み続けました。

桜の花を星に見立てた、散る流れ星と星好き子狐のおはなしでした。
細かいことは気にしません。だいたい童話の狐は話をするし、リアルガン無視でファンタジーなのです。
しゃーない、しゃーない。

4/25/2023, 1:23:56 PM