紅月 琥珀

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 踏み込まれたくない領域というのは誰にでもあるもので、それと同じ様に奪われたくないモノも、譲れないモノも存在する。
 君と僕の関係性を例えるなら、略奪なんだろうなと垂れ流していたテレビを観ながら思った。
 適当につけたチャンネルでやっていたのが恋愛系のバラエティ番組で、トークテーマが恋人との関係性について。特に興味も無かったけど、他の番組も対して面白そうなものが無く⋯⋯これでいいやと聞き流しながら食事をとっていた。
 ふと、聞こえたテーマに僕は君との事を思い浮かべる。喧嘩と言うほどでも無いが、互いが互いに我が強くて良く衝突してはお互いに踏み込まれたくない領域まで―――土足で侵入して荒らすを繰り返していた。
 本当に不愉快な程、互いの手放したくないモノを真っ向から否定し合い、奪ってはボロボロになるまで傷つけ合う。
 正直、付き合っているわけじゃないけど⋯⋯なんでこんな人と一緒にいるんだろうとは何度も思っている。けれど、仕事上の付き合いもあるので我慢していた。
 何度も必要最低限の付き合いにとどめようと努力したけど、彼女の方が何故か僕に絡みに来る。あらゆる手を尽くして距離を取ろうとしたけど、その度に彼女は益々躍起になって絡みに来た。

 迷惑な人。凄く嫌な人。
 でも、凄く仕事が出来て⋯⋯純粋に尊敬出来る部分もある。
 何度も傷つけ合って奪い合う。
 良い所も悪い所も含めて、ボロボロになるまでやり合い続けて―――いったい僕らは何を成そうとしているのかと、最近よく思うようになっていた。
 いっそ転職でもしようかと思ったが、きっと彼女の事だから関係なく今までのように距離を詰めてくるだろう。
 どうせ何しても無駄ならば―――いっそガードすら捨てて相手を叩きのめしてしまおうか。
 そんな考えに浸りながら、今日も君と僕の奪い合いが始まった。

4/11/2025, 12:08:27 PM