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あの頃の不安だった私へ


残念ながら今の私にはおまえが何をそれほど不安がっていたのか、もう思い出すことすら難しい。

不安が消えた気配はない。
おそらく私は頭の動きが極端に鈍くなっただけで、昔から何一つ変わってはいない。

この歳にして不安なことが一貫しているらしいことに、己の頑迷さに呆れ、諦めの悪さを笑い、頼りなさに寄る辺もなく震える。

それを薄らぼんやりと墨のような黒い海に仰向けにたゆたいながら、ひたすらに暗闇をあてなく流されゆく今の私は、もうはじめからそのような生き物であったとした方が良いかも知れぬ。

あの頃のおまえは、未来のこのような自分を予感していたのか。
哀れなものだ。
まあ、どうでもいいことか。
再び瞼を閉じる。

混濁の海へとまた意識が散ってゆく。



5/24/2023, 10:36:51 AM