埼崎

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これは、地球に暮らす1人の男の話の、
最初の一言である。
〝__三日月は未完成なわけではない〟
この惑星とは違う、別の惑星。
それら全てと繋がっているのは宇宙。
部屋と部屋を繋ぐ廊下のようなもの。
「部屋」は一つ一つの惑星。
惑星ごとに別々の種族が住んでいる。
本当に、住んでいるのだ。
しかし、月には誰も住んでいない。
この世界にいる者は皆声を揃えて言う。
〝月は、欠けたり満ちたりして、危険だ〟
今の私達が見ても、
なにも危険だとは思わないだろう。
しかし、これは私達が住む世界とは別の世界の話だ。
まだ、月が本当はずっと丸いことを知らない。
だから、「月」という言葉は「不完全な者」
として、悪口にもなっていたのだ。
しかし、それに疑問を持った者がいた。
それが冒頭にでてきた1人の男だ。
男は、月を眺めるのが好きだった。
それと同時に、月も、男を愛したのだ。
月の神が。
月を愛し、月の神に愛された男。
月の神は、小さな、小さな妖精の大きさで、男の元に現れた。それは、男にしか見えないものであり、
それを全て理解すると、男は心底喜んだ。
今まで、それを他人に言ったことはない。
言ってはいけないと、男は思ったのだ。
そうして、5年の年月が経った。
とある、三日月の日の夜。
男は、月の神にこう告げられた。
〝月は、消えているのではなく、隠れている。〟
男は、その言葉の意味をすぐに理解した。

1/9/2024, 11:04:47 AM