「もっと、好きになっちゃってもいいかな」
頬を紅く染めて、いつも以上に下がった眦にため息をついた。顔にかかった髪を払ってやるも、くふくふと笑いながら机に突っ伏してしまって意味がない。
ここで寝るなと声をかけても返事はなく、肩を揺すると吐くからやめてと文句が飛んでくる。机の上には缶チューハイやビールの空き缶、ガラスのコップには水が入っているかと思いきや甘いアルコールの香りがしたのでたぶん日本酒だ。それらを飲み散らかして本人は楽しそうにしているのだから怒るに怒れない。
どうにかベッドまで運んで布団をかけてやる。まあ予想はしていたが暑いと言って剥いでしまうので腹の上にだけかかるよう調節してあげた。
すぐに寝息が聞こえてきて何度目かの溜息が零れる。
酒に強いわけでもなく好きでもないが、酩酊感とかつて酒を通じて得た幸福な記憶が心地よくて忘れられないらしい。酔って酔って、吐いても記憶をなくしても、また酔えるようにと酒をあおる。やめられないのだと涙する姿に何も言えないまま同じことを繰り返すのだ。
「救世主ってことは、神様だね」
初めて出会って成り行きで介抱していたときそういわれた。危機感もなければ頭のネジもどこかに捨ててきたのかと思うほど無防備で頼りない人だ。
ただ気まぐれに、最後くらい人の役に立ってからでもいいかな、と肩を貸しただけなのにね。言い過ぎなんだ。
本物の幸せを見つけられたらいいね、
あなたも、
わたしも、
【題:神様へ】
4/14/2026, 2:16:44 PM