川柳えむ

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 あまりの暑さに、近くの自販機に飲み物を買いに行く。
 炭酸を買い、公園のベンチに戻ると、隣に座る君に「飲む?」と尋ねた。
 君は静かに首を横に振り、僕のことをじっと見ていた。
 僕は見られっぱなしで、少し居心地悪く感じながらも、炭酸を飲んだ。

 特に予定もない僕等は、なんとなく公園に来ていた。 
 こんな暑い中、二人ともよくその判断に至ったよな。と思う。
 でも、空は青いし、目の前にある小さな噴水は涼しい音を立てながら水を噴き出しているし、蝉の鳴き声は響くし、隣りにいる君は薄手のワンピースを着て座っているし。なんだか、これでもかってくらい夏を感じた。
 ぼーっとそんな辺りの様子を窺っているうちに、時間が過ぎて、まだ飲み切ってない炭酸は気が抜けてしまった。すっかりぬるくなっている。
 彼女が手を伸ばしてきた。そっと炭酸に触れる。
「……飲む?」
 再度伺うと、彼女はそっと頷いた。
「そうだね。暑いし、飲んだ方が良い」と、君に渡した。
 ぬるい炭酸を飲むと、彼女は言った。
「……ぬるいね」
 それから、二人して顔を見合わせて笑った。


『ぬるい炭酸と無口な君』

8/3/2025, 10:50:11 PM