あたしね、べつに、あなたの特別になりたいわけじゃあないのよ。他の女に甘い言葉を囁いて、熱い眼差しを送って、深く唇を重ねていても、あたしちっとも気にしないわ。その手があたしの肌に触れるとき、燃えるような情熱がなくたって、嫌に思ったことなんて一度もないの。だってあなたはそういうひと。あなたに焦がれる女を前にしても、眉ひとつ動かさない冷たいひと。
いいのよ、あたし、あなたから何も貰えなくても。あなたの心が遠くにあっても。その冷たい横顔を好きになってしまったのだもの。
「ねえ、あなた」
あたしあなたの特別になんてなりたくないわ。ただ約束してくれたらいいの。あなたが誰かを愛しているとしても、この部屋にいるときはその姿を見せないでいて。この部屋であたしを抱くときは、どうかひどいあなたのままでいて。
「あたしが特別愛したあなたのままで、いてくださいましね」
3/23/2023, 10:23:57 PM