月が凪ぐ夜

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鳥かごの中のその鳥の鮮やかな翅は赤く美しく、その翅をもぎ取って二度と羽ばたけないようにした。
逃げ出さぬようにその翅を手折って、手枷と足枷で縛り付け、その鳥は痛みと恐怖でその身を竦ませる。
もはや飛ぶことすら忘れた鳥は、この手のひらの上でただ愛玩されるだけのものとなった。

…欲しかったのはそうじゃない。
ただひたすら大空を羽ばたく姿に惹かれたはずなのに、けれど鳥は自由でいつかはここから飛び立っていくのだろう。

だから――これでいい。
逃すくらいならば、手放すくらいならば、すべてを奪い去って、翅を散らして地に堕とし、怒りと恨みの視線に刺されても、お前が私を愛することがなくとも、

お前が傍にいるならば…

「―――…それでいい」

【それでいい/Ēlusion】

4/4/2024, 1:45:26 PM