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生まれた時から自分の中には、命の鐘があった。
この鐘が108回鳴ると、自分は死ぬらしい。
誰に教えられたわけでもないが、その概念が、昔から頭にあった。
除夜でもないのに108回。
くだらなくて笑った日もあった。


鐘の鳴るペースは不定期で、基本は数ヵ月ごとに一度、1ヶ月に二回鳴る時も、三年近く鳴らない時もあった。



これがあることで、周りより寿命が短いことは分かっていた。いつ死んでもいいように、常に身辺整理をしながら生きてきた。





齢23、
107回目の鐘が鳴ってしまってから約1ヶ月。

あの脳内に響く不気味な音があと一度鳴ったら、自分は死ぬ。
いつでも死ぬ覚悟は出来ていたのに、それを自覚して、いままでにないほど恐怖していた。

だめだ、
せめて、せめて、家族や友人に遺書を書き終わるまでは、待ってもらえないだろうか。
そうしなければ死んでも死にきれない。


105回目ごろから考えていた文章を著すために、震える手でペンを持ち直した。



【鐘の音】

8/5/2024, 10:31:13 AM