薄墨

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そして、猫は九回死に、犬は五回生きる。
なぜそうならねばならなかったかは、誰も知らない。
知っているものがいるとしたら、ただ1匹、蜃気楼かガラス細工のような町の大通りを駆け抜けていった、あの目の赤いネズミだけだ。

大通りは曲がりくねり、大きくうねって波打っている。
のっぺりとした町の建物は、遠近法で小さかったり、大きかったりして見える。
空は薄く靄がかかったようにくすんでいて、輪郭すら怪しい。
耳をつんざくような静けさが、小さな町を包んでいる。

何もいないけど、何かが生活していると確信する。
冷たい張り詰めた朝の空気が、蔓延している。

そして、猫は九回死に、犬は五回生きる。
そして、私はこの超現実に立ち尽くし、ネズミは1匹逃げていく。

道はうねり、町はくすんでいる。
そして、静けさが小さな町を包んでいる。

10/30/2025, 2:01:33 PM