燈火

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【花咲いて】


私を情報通だと言うけど、それはあなたを知りたいから。
いろんな人と関わって、たくさんの噂に耳を澄ませる。
そうして集めた中に、あなたの想い人の話があった。
私とは似ても似つかない、もの静かできれいな人。

真実を確かめるまでもなく、あなたに打ち明けられた。
喉の奥からせり上がる嫉妬が声に出そうで、口をつぐむ。
その一線を越えなければ、私は友人でいられる。
悪魔が嘲笑うように、失恋の瞬間は目の前で訪れた。

放課後、廊下で話していたらあなたの言葉が止まる。
窓の外を見て固まっているから、私も目を向けた。
校門付近で輝く笑顔を浮かべ、噂の想い人が駆けていく。
他校の生徒と手を繋いで歩く背中をあなたは見ていた。

近すぎたのかもしれない。何を伝えても届かなくて。
冗談だと決めつけて、ありがとなって笑うのが憎い。
誰が同情とか励ましでこんなこと、言うと思うの。
大暴れするこの鼓動を聞かせてあげたい。

小さな芽生えを自覚したときに摘んでおくべきだった。
ふいにあなたに手折られて、花瓶の用意なんてない。
それでも尊く思ってしまう。馬鹿みたいでしょう。
逆さに吊るせば、少しだけ長く色を残してくれる。

自覚していた以上に、あなたへの想いは根強かった。
手折られてもなお、茎は生きていて伸びようとしている。
暇そうに揺れる手を見つめ、頭の中では妄想ばかり。
まさか、今まで通りに話せることで胸が痛むとは。

第三者から伝わる言葉は、本人のより力を持つらしい。
お節介な友人が私を哀れんで、想いを届けてしまった。
「気づかなくて」と謝らないで。もう傷つけないで。
あなたが軽く握るだけで粉々に砕け散るのだから。

7/24/2023, 7:02:56 AM