海喑

Open App

最近のことだが、彼女がやるせない表情を見せる時がちょくちょくある。
理由を聞いても「やるせないって思ったことないんだけどな、そうだったんだね。ごめん」
と謝られる。俺は謝って欲しい訳じゃない、理由を聞きたいだけなんだ
彼女は自分を偽る癖を持っている、それは以前言っていた、はずだ。
最近それは減ってきてはいるものの、このことに関してはあまり減っていない
どうしたら理由を言ってくれるのか、俺はそんなことを考えていた

ある日、徹夜でずっと作業していると尋常じゃない程の眠気が襲ってきた
ソファーに座っている彼女の隣に腰掛けて話そうと思った瞬間に瞼がとても重くなって
寝てしまった。
それからどのくらい時間が経っただろうか、俺は目を覚ます
起き上がろうかと思ったが、なにか彼女が喋っているのが耳に入ったからそのまま寝たフリをして聞くことにした。
「あのね、最近貴方もう気づいてると思うけど、私ずっとやるせない、切ない気持ちでいっぱいなんだ。貴方との生活に不満があるわけじゃないの。寧ろとても楽しいよ
だけどさ、いつかこの関係も崩れちゃうのかなって。昔から私達喧嘩はしないと言ってるけど
どこかでトラブルが起きるかもしれない、そしたら貴方は私を幻滅するかもしれない。
こんなことをずっと考えてるから私はやるせない表情、気持ちになってたのかもしれない。
貴方はどうなんだろう。こんな被害者妄想をずっと話してる自分を偽る虚言癖との関係をずっと保ってくれるのかな、」
少し切なそうな声で話す。最後の方は涙ぐみながら話していた。
「俺はそうするつもりだ」
あぁ、声出しちゃった、
「……起きてたんだね、おはよう。よく寝れた?」
「うん、ていうか運んできてくれたんだね、ありがと」
「ううん、全然。あんなとこで寝たら疲れ取れないでしょ、
…さっきの話なんだけど、本当にそうしてくれるの?」
「うん、何年も一緒に話したりしてるんだよ?ならここまできて関係崩す訳にはいかないでしょ
そもそも崩そうと思うことは無かったし」
と言うと彼女は泣いてしまった
「そうだよね、ありがとう、ホント……」
笑いながら涙を零し俺に礼を言う
「どういたしまして、どう?本音聞いて少しは気持ち晴れた?」
「うん!!」
「ならよかったよ、あ、手伝って欲しいとこがあるんだ……」
「いいよ全然、見せて見せて〜、」
彼女のやるせない気持ちが晴れてよかった
君はやっぱりその明るくも子供っぽい笑顔が一番似合ってるよ。

8/24/2023, 12:55:27 PM