8月31日、午後5時
去年の夏も、そうだった。
一昨年の夏も、きっと。
8月31日、午後5時。
太陽は、まだ、空にいて、
でも、その光は、夏のそれとは違って、少しやさしい。
熱いのは、日差しのせいじゃない。
胸の奥が、ぎゅっと、熱くなる。
それは、過ぎてしまった夏への、ほんの少しの、後悔と、
そして、もうすぐ始まる、新しい季節への、
漠然とした、不安と、
それから、ほんの少しの、期待。
夕焼けの色が、少しずつ、濃くなっていく。
空に、赤と紫と、そして、なんだか、うすい水色。
その色を、見つめていると、
なんだか、遠い昔の、
忘れていた記憶が、ふいに、よみがえってくる。
それは、特に、たいしたことのない、
ただ、風が、少しだけ、やさしかった、
そんな、夕方の、ひととき。
夏休みは、終わってしまった。
でも、わたしたちは、まだ、ここにいる。
この、なんでもない、
特別な、8月31日、午後5時。
この、なんでもない、
特別な、時間が、
いつか、遠い未来で、
大切な記憶になって、
わたしたちを、そっと、あたためてくれる。
そんな気が、する。
9/1/2025, 5:04:27 AM