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 「料理ブック」


 中学3年生の山田有紗は、海外研修旅行と言う名の修学旅行を楽しんだ。修学旅行最終日、空港で日本着の便を級友と共に待っていた。時計は8時を指すと言うのに南半球に属するこの国は夕暮れを眺めることが出来る。

「オーストラリアに居ると体感時間バグるよね」
「え、それな」

 辺りが少し明るいとは言え、ここに居る者は全員静かだ。引率の先生は、生徒が騒ぐの防ぐため常に目を光らせていた。友人は、しおりを書くのに夢中なので邪魔にならないよう、反対側に居た幼馴染と話す。

「三奈ちゃん、もう終わったの?」
「うん!いや、終わってない。書けることがほぼない」

そう言ってしおりを見せる。文面が崩れていて読みにくい。因みに私も終わってない、まあ来週提出だから良いでしょう。

「そう言えば、もうすぐ誕生日だよね。うちら」

 幼馴染の柄本三奈とは保育園からの仲だ。しかも誕生日が一日違いで家が近いこともあり毎年恒例でプレゼント交換をしていた。

「ああ、今回何も準備してない」
「私はあげるけどね」

 遠回しに「今年は無し」と解釈した有紗は皮肉に反抗した。まだ、あげるプレゼント決めていない自分もどうだと思うが。

「じゃあ、何が良い?チョコでも良い?」

 三奈は考え込む、今年も料理方針らしい。

「チョコなら何でも良い!」
「ほんと?ならそれにする」

 有紗はこの際だから、三奈の最近の趣味を聞いた。

「料理かな...。あ、でもお菓子作りだけ」
「一般的な料理は?」
「苦手なんだよね〜!」

 ハハハと笑いながら言う。どれぐらい苦手と言うと家庭料理が作れないという。

「いや、いけるいける。お菓子作れるならやれるよ」
「いや、マージで駄目っすよ」

 話に夢中になっていた私達は先生の視線に気付き、体を丸めて声を潜めた。二人はニヤリと笑った。

 後日、集合場所でプレゼント交換をした。有紗は料理ブックを三奈はチョコマフィンを。阿理はマフィンを食べながらLINEで彼女の料理を褒めた。

 さて、来年は何を送ろうか

12/3/2025, 10:36:13 AM