名無し

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  星明かり


だんだんと空の端が暗くなって、とっぷりと街が夜に沈む。

今日は新月なようで、ベランダに出ても月は見えずに、光り方も大きさも様々な星々が光っているだけだった。

春になって暖かくなってきたといっても、まだ夜になると肌寒さが残る初春の季節の風に少し、身を震わせる。

星がよく見えるから。

そう言って少し市街地から離れたこの場所を二人の家にしよう、そう言ったあなた。

この家に引っ越して、初めて見たここから見える景色は息を呑むほど美しかった。

街頭にも邪魔されずに各々自分たちの光を主張する星たち。

都会と田舎では比べ物にならないほど星の光り方が違う、そう聞いたことはあったけどこれほどとは思わなかった。

何より、星が好きなあなたが自慢するように、少し照れくさそうに星々の説明をしてくれるのが嬉しかった。

光り輝く星に負けないような笑顔で、私の名前を呼んでくれたのが嬉しかった。




あんなにも綺麗で儚くて美しかった星々が、あなたがいないとこんなにも色浅く見えるのか。

あの北斗七星は、あんなに小さくなかった。

もっと光っていて、大きくって綺麗だった。

春の夜空を我が物顔で独占するような一等星だったのに。

今はこんなにモノクロに、使い古した雑巾みたいに見える。

もっとこの夜空をあなたと見たかったよ。

まだ、春の星たちを5回しか見てないでしょ。

ああ、またあなたの星を語る声を聞きたいな。

もう、忘れてしまいそうなその声を。


4/20/2025, 1:46:26 PM