冬になったら
「今の時期でこんなに寒いのにさ、冬んなったらどうなっちゃうんだよ」
ポケットに手を突っ込んで、亀のように首を窄める。
そんなに寒いかなぁと思いながら隣を歩く私は彼のポケットに手を入れて握る。
冷た!と悲鳴をあげながら睨まれるも、手を振り解くことはしないその優しさに笑いが込み上げた。
「何がそんな面白いんだよ」
「いやぁ?別にぃ?」治らない笑いを強引に押さえつけて答える。
太陽にはうっすらと雲がかかって、風が吹いて。握った手が少しだけ震えた。
「冬んなったらさ、北の方に行こ」
「普通あったかい方に行くんじゃないのかよ」
「スキーしたり鍋食べたりさ、海鮮も美味しそうだなぁ。北の方が寒いときに食べると美味しそうなの多そうじゃん」
なんだそれ、食い意地張ってんな。そう笑いながらポケットの手を握り返してくれた。
「北の方ね。行こっか。んで、うまいもんいっぱい食お」
11/17/2024, 5:15:56 PM