「1年後の自分に、手紙を書いてみましょう」
始業式の次の日。硬い空気の中、新しい担任が言う。
「なんでもいいんですよ。先生たちも、お友だちも、誰も見ません。1年の目標とか、頑張りたいこととか。1年後の自分に質問をしてみてもいいですね」
こんなに張りつめた空気でも『お友だち』と言うあたり、この人は根っからの小学校の先生らしい。
前の子がぎこちなく振り返る。プリントが少しよれていた。力が入りすぎている。緊張しているのか。
溜め息をぐっとこらえて、プリントを受けとる。
1年。
1年も、またこんなつまらない空間を、つまらない人たちと共有しなければならない。
目標も、頑張りたいことも、楽しみなこともない。
ただ、淡々と毎日を処理するだけ。
『1年後』なんて、僕にはあるのだろうか。
死にたい、なんてことは考えない。今の僕にその勇気がないのは、僕が一番わかってるから。
それでも、夢見てしまう。
1年後の僕へ。
そろそろ、勇気は出ましたか。
5/8/2023, 11:30:39 AM