まる子

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逆光ってね、人物や花を美しく、雰囲気のあるドラマチックな写真・映像にする効果があるんだって

彼女はカーテンを軽く開く
「ねぇ、私、、、綺麗?」
彼女は悪戯っぽく微笑むと、純白のドレスを揺らす
その指には、プラチナの指輪が輝いていた
「綺麗だ、、、、」
僕は、それ以外何もいう事が出来なかった。
ただ茫然と彼女を見つめる。今ここにいる彼女が女優のように見えた
「苦しくないか?」
僕はそっと彼女の頬に触れる
「この日をずっと楽しみに頑張ったんだから、褒めるのが普通でしょう?」
彼女はムッとすると、柔らかく微笑む。
「不思議ね、夢みたい。どうせ、すぐに消えちゃうだろうけど」
ー儚いからこそ、綺麗なんだ−
花だって蝶だって、そうやって消えていく。
だが僕には、そう言えなかった。
僕は、拳を握りしめる事ぐらいしか出来なかった
「やぁね、そんなに真面目に受け取らないで。困らせる気は無かったの」彼女は僕の頬を優しく撫でる。
夕日の逆光を浴びた彼女は、目を逸らしたくなる程美しかった
僕は、彼女の離れそうな腕を強く掴む
「頼む、、行かないでくれ」
ただ、それだけだった。
「そんな事言わないで。あたし、そんな事言われたら、、」彼女は困ったように微笑むと、僕の肩口に顔を埋める。彼女の呼吸が乱れると共に、どこか遠くから電子音が鳴り響く。
そんな悪夢だった。いや、悪夢の方がまだ救いはあった。
「北野さん、朝ですよ。体調はいかがですか?」
看護婦はゆっくりとドアを開ける。
朝日の逆光を浴びていた僕は、震える声で答える
「妻が、、、妻が、、待ってるんです。今日は結婚式で、、、ドレスを着て待ってるんです」
僕はベッド柵を強く握りしめる。
「はい、北野さん元気ですね。怖い夢でも見たのかな?
大丈夫ですよ。先生が来るまで、鎮痛薬を投与しましょうね」看護婦は、僕の点滴に触れる。
ベッドの上には、仲睦まじい夫婦の写真が立てられている。ガラス越しに反射した朝日が、彼女の輪郭を曖昧にしていた。写真立てのすぐ下に、一枚の花びらがあった。誰にも拾われないその上を、逆光だけが静かに照らしていた。カーテンが風もないのにわずかに揺れ、部屋には点滴の音だけが残っていた。

1/25/2026, 4:20:11 AM