いぐあな

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300字小説

剣士と剣

 その剣は険しい岩山の頂上に刺さっていた。凄まじい切れ味と、とてつもない大きな力を持つ剣で、引き抜いた者全てに善悪の関係なく力を与え、ときには大地を沈め、国を滅ぼしたこともあった。
 そんな剣をある日、とある剣士が抜いた。彼は剣の力を自分ではなく他人の為に使い、沢山の人を救った。そして多く人に慕われ、惜しまれ、亡くなったという。

「無事か?」
 森に薬草を採りに行った帰り道、魔狼に襲われた私を通りすがりの剣士様が救ってくれた。
「はい。ありがとうございました」
「気を付けて帰れよ」
 笑顔で手を振り去る剣士様に深々と頭を下げ気付く。剣士様の足下から伸びる影。剣の形をしたそれがひょこひょこと嬉しそうに揺れていた。

お題「善悪」

4/26/2024, 11:45:15 AM