沁み圖書房

Open App

冬になったら。

「寒い!」
11月に入り、一週間ほど続いた夏日の気温が一気に下がり、秋を通り越して冬を連れてきていた。冬になったら寒くて嫌だなと思っていたのもついこの間に感じているのに、とんでもなく寒い。冬って結構温かいもんだったっけな、なんて呑気なことを考えていた自分に、令和ちゃんから活を入れられた気分である。

季節は冬並みで寒さが体の芯に堪え始めていたが、季節は紛れもなく秋なのだ。
それだったらもう少し温かくても良かったのではないかと苦言を呈したくなったけれど、空を見上げた瞬間、映った景色に頭が一杯になった。

夏とは違ったカラリとした寂しさが残る、澄み切った青空。
薄くもなく、濃くもない、何事もない平凡な一日の中で、なんとなく日暮れを見た時と似ている感覚にしてくれる空の青さがそこにあった。
周りの木々が少しずつ色付いて美しい。赤や黄の鮮やかさが冷たくなった私の体温に移るようだ。

冬になったらの前に、当然秋がある。焼き芋の香りが駅前に漂っていた。
しだいに焼き芋から栗に変わって、だんだんとコンビニのおでんの香りに変わっていく。夕暮れ時の住宅街では夕食のお鍋の香りが漂ってくるようになるだろう。

我家のアイドル「りんちゃん」は焼き芋が大好きで、買って帰った日の喜びようは凄まじく、香りがすると一目散に走っていき、早くよこせと鳴いて甘えていた。
そんな喜び方をするものだから、よく買って帰って、家で一緒に食べたものだった。
鼻の奥がツンと痛む思い出の甘い香りは、私の心を温めてくれる。

冬になったらこたつを出して家でぬくぬくしていたいものだ。
みかんを食べて、漫画を読んで、起きたらゲームをして、こたつから出たくない。これの代わりが布団だと思う。コロナ禍によりリモートワークが普及したのは世間の噂話で、部長が常々口にしていたリモート推奨を掲げているというでまかせに誤魔化されることなく、私はせっせと出社していた。数年前、寒さに耐えきれず綿が入った履き物(ズボン)を購入したところ、母の目を引いたようで、私にも注文してとお願いされたのはいい思い出である。今も我が家で大活躍しているズボン、とてもオススメなのだけれど、これを履いてデートに行ったり、街中に出てウィンドウショッピング出来ないのが難点だ。せいぜい出勤時の寒さ対策に履いていますとアピールするくらいしか活躍させられないのが悔しい。

大きなクリスマスツリーが見たくなる季節は来月12月、大仕事や大掃除に心が穏やかでなくなるのも今頃から12月にかけてではないだろうか。
皆さんはどのような冬になったらを想像し過ごしているだろうか。
あるところでは雪対策をし、電気代に気を使い、大感謝祭を心待ちにし、クリスマスコフレに心をときめかせ、就活や進学のため勉学に励み、人生が大きく変わる人もいるだろう。私は、冬になったら今年一年を後悔しないように過ごしたいと思う。

どうか、息災でありますように。

11/17/2023, 5:48:50 PM