言葉を旅する。
こう書くとワールドワイドな世界観を思い浮かべる人が多いだろうが、何ということはない。
自分の中で生まれる言葉を今一度見つめ直す事を指している。
毎夜毎夜、言葉と向き合う習慣は
初めは一人で行っていた。
一人真面目にお題に向き合い言葉を選び、文章を作る。
一見シンプルで簡単に見えることだが、
これがなかなか難しい。
言葉が出てこないということがしばしばあった。
言葉が出てきてもしっくりとこない。
言葉のボキャブラリーが昔より明らかに足りないのだ。
一体、どこに落としてきてしまったのだろうか。
それすらもわからない。
忘却の彼方に葬り去られてしまったのかもしれない。
かつては選び放題だった言葉が選べないというのはもどかしく苦しい。昔のようにはいかないのだと悄気げる日々が続いた。
それでも、昔は昔、今は今でしかない。
取り敢えず言葉と向き合う。
それだけを考えて、毎夜毎夜書いていた。
習慣化すれば言葉が出てくる。なーんて、うまい話はなく、言葉が出てこないのは相変わらずだ。
それでも、お題に向き合うことが習慣化してくると、不思議なキャラクター達が頭の中で見え隠れし始めた。
気になりつつも言葉と向き合っていると、
彼らは私の手助けをしてくれているようだった。
大抵はヒントのような単語をフラッシュ暗算のようにパッと見せるだけだが、四角いカードのように見えるその光景に書かれた文字は、お題と良くリンクしている。
ヒントを元にお題に取り組む事が増えると、手助けしてくれているのは一人ではなく複数人であることがわかった。
私は、ヒントをくれる事のお返しとして、彼らの物語を紡ぐようになった。
彼らと、頭の中で又は文字を通して、語り合うことが多くなると、彼らの姿も見えてきた。
個性的な彼らを言葉で捉えていくのは、楽しい。
いつからか私は一人ではなく、彼らと共に言葉と向き合うようになっていた。
初めは一人ではじめた言葉の旅だったが
彼らという仲間を得て、賑やかな旅路へと変化した。
彼らとの旅路の果てに
何も得られなくても、
言葉の旅が無意味だったとしても
彼らと共に賑やかに、時に真面目に
言葉を旅したことはきっと忘れない。
1/31/2024, 1:35:48 PM