Ryu

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汗水流して、誰かのために働くのバカみたい。
他人を気遣って、自分をすり減らすのバカみたい。
実験マウスみたいに毎日同じことの繰り返しで、
こんな人生に意味なんてあるのだろうか?
かつてはワクワクした出来事も、いつしか当たり前になって、その輝きを失ってゆく。
こんな世の中で、あくせく生きていることがバカみたい。

そんな愚痴をこぼしながら浴びるほど飲んで、帰り道で居眠り運転の車にはねられた。
警察や救急のお世話になり、何とか一命を取りとめ、長期の入院を余儀なくされる。
たくさんの人達に命を救われ、意識の無いうちにここまで運ばれて、道端に放り出されたまま息絶えずに済んだ。

病室のベッドの上でしか生きられない生活が始まる。
マウスどころか植物のように身動きが取れない。
そんな毎日が一週間も続くと、今までの繰り返しの毎日が愛おしく思えてきた。…ホント、バカみたい。
人生に意味なんて無くても、普通に生きてることに奇跡を感じた。

すべての身の回りの世話を他人にお願いして、生きてるんだか死んでるんだか分からない日々。
コロナの影響で面会もNGで、いることが当たり前だった家族に会いたくて仕方がなくなってくる。
次に会える日をワクワクして待とう。
今の自分には、それが大きな支えとなっている。

あの夜に愚痴ったことはすべて覆された。
だから俺は、バカみたいにあくせく生きることを選んだ。
良し悪しじゃなくて、それが人間らしい生き方なんだろう。

3/23/2024, 8:35:30 AM