少年はじっとその草に目を凝らしている。細長く尖った葉を持つ雑草の前にしゃがみ込んで動かない。霧が出た朝の散歩道。少年は朝ごはんも食べずに駆け出して、この草地に舞い込んだ。
少年は不意に手を伸ばす。目線の先にはヨシの葉先に載ったまあるい水滴。朝露だ。ゆっくりと慎重に、手を出して、指先の震えを抑える。
その人差し指が、ついにヨシの葉を捉えた。
葉先を指でちょんと押すと小さな粒がするすると葉脈を流れて先端に集まってくる。水滴が指に触れる直前、ぱっと手を離す。しなった葉は反動で大きく跳ねて、大きな水の粒は ぱちんと弾けた。
大きな粒が弾けて小さな粒に分かれ、放射状に飛び散っていく。
この一瞬のスリル。この光景をその目で見るために、少年は霧の出た早朝を起き出してくるのだった。
11/13/2024, 12:20:47 AM