「君と出逢ってから、私は」
「野菜ジュース、良かったらどうぞ」
彼女は無邪気に微笑んで言った
私は彼女の上司であり、
本当の正体は、悪魔だ
それも闇の世界のトップ中のトップである悪魔だ
そんな私に彼女は野菜ジュースを差し出した
「何が目的だ」
いつものように私は彼女に訪ねる
「野菜ジュースの方が良いかなと思って。お嫌いでしたか?」
「いや、そうではない、私に何を求めているのだ?」
「えっと、健康ですかね?」
「健康になりたければ、私のような悪魔ではなく、他の神々に頼めば良いことだろう?」
「いえ、部長の健康のことですよ。でもなぜ悪魔なんですか?(笑)他の神々って?(笑) サプリとか、運動とか、栄養とかに気をつければ良いだろうって普通言いません?部長、たまに面白いこと言いますよね(笑)」
彼女は私の正体にまだ気が付かない
元々私達が遠い星でツインであったことも
時間のない世界で四六時中幸せに暮らしていたことも
そしてこの地球に私を追いかけてきたことも忘れている
輪廻転生のたびに何度も私を裏切り
他の男に抱かれてきたことも
潜在意識のどこかで
彼女の魂は私をまだ愛してくれているのかもしれない
私を思い出してくれるかもしれない
そう期待し、願ってきたこともあった
「遠慮なく頂くよ、ありがとう」
君と出逢ってから、私は
何世紀もこの地球で悪魔として生きている
常に生まれ変わる君のそばで
悪魔のトップなら君を確実に守れるから
了
5/5/2023, 5:16:32 PM