G14

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 朝顔を洗っていると、鏡に自分が映ってないことに気が付いた。
 目の錯覚かと思って目をこする。
 けれど、鏡の中の自分はどこにもいない。

 漫画の中でしか見ないような異常事態。
 あまりの非常識に、眠気がすべて吹き飛ぶ。

 パニックになりながらも、心当たりを探してみる。
 昨日を事を思い出そうとして……
 ダメだ、酒を飲みすぎて何も記憶が残ってない

 自分は毎日代り映えしない生活を送っているから、何かあるとしたら昨日である。
 早く思い出して原因を突き止めて解決しないと、困ったことになるぞ。

 困ったことになる……?
 困ったことに……?

 ……
 …………
 困らないな。

 うーん、鏡に映らなくなったところで、なにか不便なことがあるのだろうか?
 自分はオシャレしないので、鏡を見る習慣がない。
 顔を洗うため、一応毎朝目にはしているのだけど、意識の中に入ってない。
 つまり見ていないに等しい。

 そういえば、久しぶりにちゃんと鏡を見た気がする。
 『結構前から映ってません』と言われても、反論できない程度には鏡を見ていない。
 という事は困らない?

 よし解決!

 最初は何事かと思ったが、なんてことはない。
 そもそも鏡を使わないのだから問題ない。
 鏡に映らなくたって、生きていけるさ。

 なんなら『鏡に映らない系』でネットで売り出すか?
 いや、CGと言われるのがオチか……
 それに映らないからなんだっていう……
 まてよ、吸血鬼って鏡に映らないから、吸血鬼って言う設定で売りだし――

 そこでハッとした。
 そういえば、吸血鬼は噛むことで仲間を増やすと聞いたことがある。
 もし知らないうちに噛まれていたら……

「まさかね」
 不安を誤魔化すように、ぶつぶつ言いながら首筋に手を伸ばす。
 そこには何かに噛まれたような傷があるのであった

11/4/2024, 1:09:41 PM