朝顔を洗っていると、鏡に自分が映ってないことに気が付いた。
目の錯覚かと思って目をこする。
けれど、鏡の中の自分はどこにもいない。
漫画の中でしか見ないような異常事態。
あまりの非常識に、眠気がすべて吹き飛ぶ。
パニックになりながらも、心当たりを探してみる。
昨日を事を思い出そうとして……
ダメだ、酒を飲みすぎて何も記憶が残ってない
自分は毎日代り映えしない生活を送っているから、何かあるとしたら昨日である。
早く思い出して原因を突き止めて解決しないと、困ったことになるぞ。
困ったことになる……?
困ったことに……?
……
…………
困らないな。
うーん、鏡に映らなくなったところで、なにか不便なことがあるのだろうか?
自分はオシャレしないので、鏡を見る習慣がない。
顔を洗うため、一応毎朝目にはしているのだけど、意識の中に入ってない。
つまり見ていないに等しい。
そういえば、久しぶりにちゃんと鏡を見た気がする。
『結構前から映ってません』と言われても、反論できない程度には鏡を見ていない。
という事は困らない?
よし解決!
最初は何事かと思ったが、なんてことはない。
そもそも鏡を使わないのだから問題ない。
鏡に映らなくたって、生きていけるさ。
なんなら『鏡に映らない系』でネットで売り出すか?
いや、CGと言われるのがオチか……
それに映らないからなんだっていう……
まてよ、吸血鬼って鏡に映らないから、吸血鬼って言う設定で売りだし――
そこでハッとした。
そういえば、吸血鬼は噛むことで仲間を増やすと聞いたことがある。
もし知らないうちに噛まれていたら……
「まさかね」
不安を誤魔化すように、ぶつぶつ言いながら首筋に手を伸ばす。
そこには何かに噛まれたような傷があるのであった
11/4/2024, 1:09:41 PM