『手を繋いで』
「いやだいやだいやだ!!」
だだをこねている
「だって負けたくないもん
だっていやでしょ?
だって……、
もう十分頑張ったんだよ?
もう自分たち完璧でしょ?
あんなに大変なのを乗り越えたんだよ?
なのになんで……
こんな無理なことさせられるの?
自分で自分を虐めないでよ!?
いじわるしないでよ!?
まだがんばらなきゃいけないの!?
ひどい!ひどいよ!!」
その言葉を黙って聞いた
時々相槌を打ちながら
ただそれだけ
この子が少し……ほんの少し
前に進めることを信じて
この子が手を伸ばすことを信じて
だからこそ……
だからこそ、そこから―――
「……どうして?
なんで……こんな……
違うの…………」
ひとつずつ―――
「………ひどい
なんで……、だめなの…?」
ひとつずつ――――――
「…………いやだ……
……いやだ………………
いやだよぉ…!!!」
ひとつずつ―――――――――
向き合っていく
……………自分の未熟と――――
自分のプライド、弱さ、拘り、
人の弱さと言われてしまうものを
この子は全部もっていた
だから、
知って欲しかった―――
どんなにつらくても
この世界と自分の
今の現実を、見せて行った
苦しみながらも、
自分も一緒に、見て行った
そして―――
自分も同じぐらい辛かった
それでも知って欲しかった
弱さを受け入れる事こそが
無限の強さの秘訣ということを
「………………………………どうしても」
?
「…………………………………
……………………………………
……………………………
………どうしても………………
……負けなきゃ…………………………
………………………だめ……?」
絞り出すように言ったその言葉
不安、不満、怯え、恐怖、
苛立ち、惨め、情なさ、プライド、
考えうる全ての負の感情を
かき分けかき分け……
そして絞りに搾って
ようやく いえるようになった
そんな――――――言葉だった
負けなきゃダメじゃないよ
負けて欲しいんだ
もちろん勝って欲しいよ?
だけどね
それでも負けて欲しい
覚えてて欲しいことがある
負けには…強さが隠れてる
負けには、成長が隠れてる
だけど、今の自分では
負けがひどい毒になる
勝ちもひどい毒になる
弱さや未熟を受け入れると…
毒は薬に変わるんだ
ずっと強くなってける
完璧を辞めるその時から
一生成長できるんだ
今までの水や肥料もとても大切
だけどこれからは
更に新しい水や肥料を
もっともっと使って欲しい
すごく成長することもある
急にかれることもある
だけどホントは気づいてるんだろ?
君の完璧が
君を苦しめてることを
いつの間にか
声なく、泣いていた―――
今でもキミはすごい
けどそのままだと
今よりもっと苦しくなる
なり続ける一方なんだ
だからこそ
どんどん負けて
時々勝って
まだまだ成長して欲しい
いつの間にか
2人、手を握っていた―――
「いやだけど……
こわい………けど…
こ……こわがるのを……
…………………………ゆるして……?」
もちろん
「…………
……………………なくのも…
……………………………ゆるして?」
もちろん
「…………………………」
いつの間にか
2人でゆっくり歩いてた―――
声なく泣いてるその姿
いったいどれだけ長いこと
一人(独り)でずっと
頑張っていたのだろうか
ゆっくり歩いて行くと
だんだん光に包まれて
次第に闇に溶けて行き
つないだ手が消えていくのか
それとも自分が消えて行ってるのか
よく分からなかったけど
目が覚めた時
私は―――
大声を出して、泣いていた
〜シロツメ ナナシ〜
3/20/2025, 12:08:33 PM