【胸の鼓動】
絵里ちゃんは打ち明けてくれた。
養子である自分に何も言わず医療費を出してくれる
家族に感謝している、と。
だけど絵里ちゃんはいつも家族に申し訳なさそうだ。
そんな絵里ちゃんは死神の僕にも優しい。
僕を友達だと言ってくれた。微笑んでくれた。
だから、
残された時間を出来るだけ幸せにしてやりたかった。
だけど現実は残酷だった。
病院に立てこもった男の囮として
家族は絵里ちゃんを見殺した。
更には彼女の死を悲しむ善良な家族を装った。
優しい彼女の最期を見守ったのは死神の僕だけだ。
彼女の胸の鼓動が沈む時、
無いはずの僕の胸の鼓動がふつふつと昇る気がした。
9/8/2023, 11:20:23 AM