たくさんの想い出
式が終わり各自教室に戻り、担任から最後の言葉を貰う。泣きながら聞いてる子や、少しくすくすしている子、じっと聞き入っている子がいる、私は卒業するという実感が未だわかず、うわの空で先生の話を聞き流しながらちらりと窓の席のnmを見る、彼はじっと凛々しい顔で先生の話を聞いていた。相変わらず絵になる横顔だ。すると、私の視線に気づいたのかこちらに目をやり微笑んだ。恥ずかしくなって急いで目線を外す、ドキドキとうるさい胸に手を当て鎮めようとするが言うことを聞かない私の心臓は、先生の話が終わるまでずっとうるさかった。
先生の話も終わりクラス中が思い出話に花を咲かせている。私もある程度友達と話しながら、先程の出来事を思いだす。nmの事は1年の時から想いを寄せていた、優しく真面目で、時折無表情の顔を崩し冗談を言うnmが好きだった。そんな彼の浮ついた話は全く聞かなかったが、彼はとにかくモテていた、こんな大人しい私にも優しいためモテるのは当然だと納得していた。3年間幸運にもクラスが一緒で、何回か席も近くなり他の女の子よりは仲良くなれたと我ながら自負していた。しかし高嶺の花のような彼に私の想いを伝えるなんて、とても勇気が出なかった。今も部活動の仲間だろうか?彼を囲って笑いながら泣いている。nmをぼんやり見ながら、彼とのたくさんの想い出の更新も今日で終わりかと感じる。そう思うと何ともなかった今日がとても寂しく終わらないで欲しい気持ちが湧き、隣にいた友達の肩を借りボロボロと涙をこぼす、私の涙に釣られたのかその子も泣き始め、周りの子も泣き始めてしまった、連鎖に面白くなって、笑いながら自分の想いを流すよう沢山泣いた。
友と別れを告げ昇降口を出る、もう戻らない高校の正門を出ようとすると、後ろから私の名前を呼ばれる。「おーい!夢主!まってくれ!」後ろを振り返ると、nmが肩で息をしながら走ってきていた、驚きと嬉しい気持ちでまた心臓がうるさくなる、彼が私の前に来て息を切らしながら、私の肩を掴む。「お前が好きだ」
真っ直ぐ私の目を見据え、顔を赤くし息を切らしている。彼の口から出た彼の想いが信じられず、思わず本当?と聞き返す。「本当だ。お前が好きなんだ」また私の目を真っ直ぐ見て嘘偽りのない声で伝えられる言葉に、思わず彼に抱きついた。あぁ、あのたくさんの想い出に、大好きな思い出に蓋をしなくても良かったのか!彼も私と同じ想いを抱いてくれていたのか!彼が私の体に手を回し強く抱き締め返すのを涙を流しながら感じていた。
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11/18/2021, 10:44:28 AM